ザワさんの肥溜め

消化と昇華

【試乗記】日産 キックス (2020)

"痛快高級コンパクト"

今回乗ったのは2020年に国内デビューした日産キックスである。

元々はブラジル向けに先行販売された世界戦略車で、今後も80ヵ国以上に向けて投入予定らしい。

アメリカと日本ではジュークと置き換わる形で販売が開始された。

2021年2月現在では三種類のパワートレインが用意されているが、日本市場で販売されるのは1.2L直列3気筒エンジンを発電機とするE-POWERモデルのみである。

 

ウワサのE-POWER
日本ではノートで初登場し、続いてセレナに導入されたので3台目となるE-POWERシステムだが、元々E-POWER搭載を前提に設計されたクルマとしては初めてとなる。

エンジンは単なる発電機とし、モーターのみで駆動を行うE-POWERは、日本の顧客ニーズとマッチし結果としてノートとセレナの売り上げを爆発的に伸ばした。

今回のキックスではノート用のシステムをパワーアップさせ、129馬力と26.5キロのパワーを抱擁する。

走行モードは三種類あり ECO<無印<Sモードの順番でスポーティーになるが、ダッシュボードに入っていたクイックガイドによると燃費効率はECO>Sモード>無印 となるようだ。その上Sモードの”S”は、スポーツのSではなくスマートの”S”らしい。

このうち好みだったのはもちろんSモード。スポーツモードの意で良くね?って位一番スポーティだし、ecoモードと無印ではアイドリングストップがオンになる。

このアイドリングストップが実に不快で、3気筒だからかしれないが始動時に車体が揺らされる。

停止時や走行時の静粛性も相まって明らかに不快である。

後に書くが燃費も常に15km/hを着ることは絶対になかったので、アイドリングストップは必要ないと感じた。

 

CMが大袈裟だろ!ワンペダルドライブ
今書いた3モードのうち、ECOモードとSモードでは例のワンペダルドライブがONになる。アクセルペダルを離している間はエンジン車で言うところの軽いエンジンブレーキに相当する減速を行い、ドライバビリティに貢献すると共にバッテリーの回生充電も行う。

これはCMが散々派手に演出してくれた為、乗る前まではブレーキ無しで止まれるなんてかえって危険なのでは?と思っていたりもした。

しかし1度乗ってみたらこれ無しではもう乗れないと思う程優れた機能だった。

と言うのも、ガソリン車であれどアクセルを抜いた時点で様々な走行抵抗から微妙に減速を始めるわけで、MT車なら尚更だ。だから勝手に減速して危険ということは全く無く、それどころか今までのガソリン車では前方車両と車間距離を合わせるのにエンジンブレーキを使うか少しだけブレーキをかけるかだったが、どちらも変則ショックもしくはブレーキランプが点灯することとブレーキパッドを減らす罪悪感を生む行為であり、とても気持ちのいいものでは無かったはずだ。

それがE-powerの場合には多用すればするほど回生で充電をしてくれるくらいなので、気持ちも体もすごく楽になる。

そしてもちろんそれは燃費にも貢献することになる。

モーター特有の優れた加速感を楽しんでいても回生を含めるとそれほど燃費を悪化させることは無いようで、今までのガソリン車ではカタログ値の半分にも満たないような乗り方でもリッター15キロを切らなかった。これは本当に凄いことだと思った。

ここまで優れているとは思わなかったので心底感動したが、無印のモードの必要性に疑問が生じる。

それこそ燃費も悪くワンペダルもoffである無印モードはなんのためにあるのだ?という具合だ。

無印モードでもシフトノブをBの位置にスライドすることで回生によるブレーキを効かせられるが、その操作自体が面倒臭い。

これは今までのガソリン車の間隔から離れられないオーナーの為だけに用意された誰も幸せにならないモードだろう。